食品製造のM&A事例 【関東】

肉料理の製造会社株式の譲渡を助言|K社さま

譲渡企業 K社さま
業種 食品製造
事業内容 食肉加工品の製造販売
売上 約80億円
地域 関東
設立
経営者の年齢
譲渡理由 総合商社
譲受企業 K社さま
業種 エネルギー事業
事業内容 石油・LPガス等のエネルギー関連を中心とした総合商社
売上 約4,000億円
地域 東北地方
設立 1932年
上場の有無 上場
譲受目的 商品ラインナップの拡充

事業承継の新たな選択肢 – M&Aによる企業価値の最大化

 

K社の売主様は、長年にわたり家業を守り続けてきた経営者です。しかし、事業承継の問題に直面し、新たな道を模索することになりました。今回のインタビューでは、M&Aを選択するに至った経緯や、その過程で大切にされていたことをお聞きしました。

 

 事業承継の課題と向き合う

――まず、M&Aを検討するきっかけについてお聞かせください 

売主様:当社は創業から50年以上、地域に根ざした事業を展開してきました。しかし、私も年齢を重ね、後継者の問題が現実味を帯びてきたのです。社内に子供はおりましたが、経営を任せるには経験も浅く、社内に適切な後継者候補がいませんでした。また今後10年先、20年先を見据えた時に果たして自社のみで戦っていけるだろうか、との漠然とした不安もありました。

 

――後継者不在の状況で、どのような選択肢を考えられましたか?

売主様:最初は、自分が続けられるところまで続けて、その間に子供を経営者たる人材まで育ててみよう。難しいようであれば、少しずつ事業を縮小するしかない、と考えておりました。しかし、長年築き上げてきたブランドやともに会社を大きくしてきた従業員の雇用を守りたい。従業員が一生涯安心して勤めあげられる会社にしたい、という思いが強くありました。そんな中で、M&Aという選択肢を知り、真剣に検討し始めたのです。

 

M&Aプロセスの開始

――M&Aのプロセスはどのように進められましたか?

売主様:以前からM&Aの提案は金融機関はじめ定期的にいただいておりましたが、その時は特に検討していなかったので、お断りしておりました。ちょうど悩み始めた時にみつきさんを知り、M&Aだけでなく、経営、税務などにも精通しているとのことで相談しました。まずは企業価値評価を実施してもらい、その後に買収候補先の選定に入りました。

 

――買収先を選ぶ際に重視されたポイントは何でしょうか?

売主様:単に高値で買ってくれる企業を探すのではなく、当社の企業理念や従業員を大切にしてくれる企業を探しました。そして、最終的に現在の譲受先であるS社との出会いがありました。

 

S社との出会いと交渉

――S社とはどのような経緯で出会われたのでしょうか?

売主様:みつきさんを通じて紹介してもらいました。S社は、まさに当社の強みとするところを伸ばし、弱みとするところを補完してくれる存在でした。この会社であれば、取引先、なにより従業員も安心すると確信しました。

 

――交渉の過程で印象に残っていることはありますか?

売主様:S社の経営陣との面談で、彼らの誠実さと当社の事業に対する理解の深さに感銘を受けました。特に、従業員の処遇や今後の事業展開についての具体的なビジョンを示してくれたことが、決め手となりました。

 

 従業員への説明と反応

―従業員の方々への説明はどのように行われましたか?

売主様:従業員への説明は最も慎重に行いました。まず、私たちだけで幹部社員に個別に説明しました。その後、全体会議を開いて、S社経営陣とともに全従業員に伝えました。

 

――従業員の反応はいかがでしたか?

売主様:最初は驚き、戸惑いの声もありました。しかし、今後の成長戦略や両社の具体的な連携方法を丁寧に説明することで、従業員の理解を得ることができました。また、S社の経営陣と当社の従業員が直接対話する機会を設けたことで、前向きな雰囲気に変わっていきました。特に若手社員からは、新しい環境での成長機会に期待する声も聞かれました。

 

価格交渉と契約締結

――条件交渉の過程はいかがでしたか?

売主様:条件交渉については、みつきさんに一任していました。企業価値算定のために、色々資料を準備したことや、多くの質問に答えたのを思い出します。財務に関することだけでなく、経営課題や今後の事業展望など経営戦略に関することまで丁寧に説明しました。事前準備で結構な時間を使ったと思いますが、結果として、それが奏功し納得のいく条件で合意することができました。

 

――契約締結までの道のりで苦労された点はありますか?

 

売主様:みつきさんより事前に説明は受けておりましたが、デューデリジェンスの過程で思った以上に多くの資料提出を求められ、対応に追われました。また財務や法務の専門家からの細かい質問にも、みつきさんと相談しながら一つ一つ丁寧に対応していきました。

 

譲渡後の変化と新たな挑戦

――M&A後、会社にどのような変化がありましたか?

売主様:S社のグループ企業となったことで、仕入・物流の効率化がかなり促進されました。また両社の商流にそれぞれの商材を加えることで、売上についても堅調に伸びました。その他、S社のネームバリューが加わることとで人材採用が随分スムーズになりました。

 

――ご自身の役割はどのように変わりましたか?

売主様:現在は、社長という立場で、継続して経営に関わっています。金融機関対応や人事労務に関する対応などの管理業務はS社にお任せしているので、以前に比べると、自分のやりたいことに多くの時間を使えるようになってます。特に大手取引先との交渉や新規先の開拓といったトップ外交をS社と連携して行っております。また、子供も含めた後継人材の育成も並行して行ってます。最近では、まとまった休みも取れるので、創業より総務責任者として支えてくれている妻と今まで行きたかったところに旅行してます。

 

M&Aを振り返って

――M&Aを決断して良かったと思う点は何でしょうか?

売主様:何と言っても、長年育ててきた会社の存続と中長期的な発展が見込めるようになったことです。従業員の雇用も守られ、むしろ新たな成長のチャンスを得ることができました。個人的には、長年の重責から解放され、新たな人生の章を開くことができたと感じています。

――逆に、課題や反省点はありますか?

売主様:これはM&Aのためだけでもないのですが、もう少し早くから社内の体制を整えておくべきだったと思います。就業規則、賃金規程などの社内規程、各種の議事録などの書類関係もそうですが、勤怠管理のシステムなど管理面についてもう少し整備していたら、と今振り返ると思います。ある程度、設備できていると思っておりましたが、このあたりは日頃から専門家のアドバイスを受けた方がよかったと反省しております。

 

 今後の展望

――今後の会社の展望についてお聞かせください。

売主様:S社のグループ企業として、今まで以上に成長できると確信しています。特に、生産能力の拡張や販路拡大など、単独では相当時間が掛かったであろうことにも、早期に挑戦できるようになりました。従業員一人一人が新たな可能性に前向きに挑戦している姿を見ると、本当に嬉しく思います。

 

――最後に、M&Aを検討している経営者へのアドバイスをお願いします。

売主様:M&Aというとすぐにイメージが沸くものではないかと思いますが、企業の存続と更なる発展のための有効な選択肢のひとつであると、経験した今では自信を持って言うことができます。重要なのは、自分の大切な会社にきちんと向き合ってくれ、価値を正確に理解し、その価値を最大化してくれるパートナーを見つけることです。

 

 おわりに

K社の売主様へのインタビューを通じて、その決断に至るまでの思いを、あらためて詳しく伺うことができました。企業の存続と更なる発展、大切にしてきた従業員の雇用維持、そしてご自身の新たな人生の開拓など、M&Aをとおして実現できたのではないかと思います。

 

M&Aは単なる会社の売買ではなく、長年育ててきた会社、築き上げてきブランドを次の世代に引き継ぐ重要な手段の一つです。今後、多くの中小企業経営者が直面する事業承継の問題に対して、本インタビューがご検討のための一助となれば幸いです。

 

           

この案件・類似案件の担当者

▷伊丹 宏久 事業法人第二部長


ヘルスケア分野に関わる経営支援会社を経て、みつきコンサルティングでは事業計画の策定、モニタリング支援事業に従事。運営するファンドでは、投資先の経営戦略の策定、組織改革等をハンズオンにて担当。東南アジアなど海外での業務経験から、クロスボーダー案件に関しても知見を有する。

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