食品スーパー事業譲渡の舞台裏 ~中堅同業への事業譲渡を決断した経営者の想い~
食品小売業界で長年事業を展開してきたP社。このたび、同社は中堅スーパーチェーンのD社へ自社の食品スーパー事業を譲渡することを決断しました。今回は、売主様であるP社の取締役に、事業譲渡に至った経緯や想いについてお話を伺いました。
- まず、事業譲渡を検討するきっかけについてお聞かせください。
売主様:はい。私どもP社は、創業以来、食品ディスカウント業態で地域に根ざした営業を行っています。業態を拡げるために食品スーパー事業に進出したものの、近年の競争激化や自社店舗の老朽化など、さまざまな課題に直面していました。特に、大手スーパーチェーンの進出により、当社の食品スーパー事業の経営環境は厳しくなってきていました。
そんな中、以前からお付き合いのあったみつきコンサルティングさんから、食品スーパー事業のみの事業譲渡という選択肢についてご提案をいただきました。正直なところ、最初は戸惑いもありましたが、食品スーパー事業の将来性や従業員の雇用を考えると、自社単独の運営に限界があると考え、検討に値する提案であると感じました。
- 事業譲渡先としてD社を選んだ理由は何でしょうか?
売主様:D社さんは、私どもと同じく食品スーパー事業を展開されている中堅スーパーチェーンです。彼らの経営理念や従業員への権限移譲のやり方に共感できたことが大きな理由です。また、D社さんは私どもの店舗がある地域において、多くの店舗を運営されており、物流の効率化や販売商品の共通化など、win-winの関係が築けると考えました。
さらに、D社さんは従業員の雇用継続にも前向きで、私どもの従業員の将来を考えても最適な譲渡先だと判断しました。
実際、転籍を希望する従業員は全て引き継いでいただきました。
- 事業譲渡の交渉過程で、特に印象に残っていることはありますか?
売主様:そうですね。最も印象に残っているのは、D社さんの意思決定の早さです。私どもの側で契約日の目処を決めていたのですが、D社さんはそれに合わせて迅速に動いてくださいました。
背景として、D社さんのオーナーさんが即断即決タイプの方で、周りを固めているスタッフの方もその決断に合わせて迅速にフォローされていました。
また、みつきコンサルティングさんが買手と売手の間に立って、綿密なコミュニケーションを取ってくださったことも、スムーズな交渉につながったと思います。彼らの存在は、本当に心強かったですね。
- 事業譲渡を決断する上で、最も悩んだ点は何でしょうか?
売主様:やはり、仲間として頑張ってきた事業を手放すことへの葛藤です。食品スーパー事業は当社にとっては新規事業であったものの、当社の社風として仲間を大事にするというものがあり、それに反するものではないかという想いを強くもっていました。ただ、冷静に考えると、会社の想いだけでは事業の発展は見込めないですし、従業員の未来にも責任が持てないのではないかと思い、譲渡を決断しました。
従業員の将来や地域のお客様へのサービス提供を考えると、食品スーパー事業においてはより大きな力を持つD社さんに事業を託すことが最善の選択だと思っています。
- 不動産付きの事業譲渡ということですが、その点で苦労されたことはありますか?
売主様:ええ、確かに不動産付きの事業譲渡は初めての経験でしたので、様々な論点が出てきて戸惑うことも多かったです。
また、賃貸不動産の賃貸借契約の継続の際に、チェンジオブコントロール条項への対応を行う必要があり、成約するにあたり一番苦労したポイントでした。
ただ、みつきコンサルティングさんが専門的な知識を持って丁寧にサポートしてくださったおかげで、最終的には大きな問題になることなく進めることができました。彼らの存在がなければもっと苦労したかもしれません。
- 事業譲渡を決断してから実際の譲渡までの期間はどれくらいでしたか?
売主様:具体的な検討を始めてから譲渡完了まで、約半年ほどでした。最初は長く感じましたが、振り返ってみると、かなりスピーディーに進んだと思います。
特に、D社さんの意思決定が早かったことと、みつきコンサルティングさんのサポートにより、想定スケジュール通りにスムーズに進んだことが大きかったですね。
- 事業譲渡後、従業員の方々の反応はいかがでしたか?
売主様:告知のための従業員集会を開いたのですが、正直なところ、最初は不安の声が多く聞かれました。長年一緒に働いてきた仲間たちですから、環境の変化に戸惑いを感じる人もいたでしょう。
しかし、私どもも従業員に対し、金銭面も含めてできる限りことを行いましたし、D社さんが従業員の雇用継続に積極的だったこともあり、徐々に前向きな雰囲気に変わっていきました。今では、より大きな組織の一員として、今までの担当業務に限らず新たなチャレンジに取り組んでいる従業員もいると聞いています。
- 地域のお客様からの反応はどうでしたか?
売主様:お客様からは、「なじみのお店がなくなってしまうのでは」という不安の声もあったと聞いています。しかし、D社さんは屋号をそのままお使いになり、また、元々地域密着型の経営を重視されていることもあり、今では、多くのお客様にご安心いただいき、引き続きお買い物を楽しんでいただいていると聞いています。
この前お店を見てきたのですが、店舗の雰囲気は大きく変わることなく運営されています。むしろ、D社さんのノウハウやスケールメリットを活かして、より安く、よりいい品ぞろえのお店になり、充実したサービスが提供できるようになったと感じています。
- 事業譲渡を振り返って、どのような感想をお持ちですか?
売主様:決断するまでは本当に悩みましたし、連日のように取締役が集まり善後策を検討していました。しかし今は、この選択が正しかったと確信しています。従業員たちが新しい環境で生き生きと働いている姿を見ると、本当に嬉しく思います。
また、地域のお客様にも引き続き喜んでいただけているようで、安堵しています。D社さんの下で、私たちが築き上げてきた事業がさらに発展していくことを期待しています。
- 最後に、同じような状況にある経営者の方々へメッセージをお願いします。
売主様:事業承継や会社の売却を考えている経営者の皆さんに伝えたいのは、「恥ずかしがらずに相談してほしい」ということです。私どもも最初は躊躇しましたが、専門家に相談したことで道が開けました。
特に、みつきコンサルティングさんのような経験豊富な専門家のサポートは非常に心強いものでした。彼らは単なるアドバイザーではなく、私たちの想いに寄り添ってくれる良きパートナーでした。
また、従業員や地域のことを第一に考えることが大切だと思います。私どもの場合、そこを軸に考えたことで、最終的に納得のいく決断ができたんじゃないかと思っています。
皆さまの会社にも、きっと素晴らしい未来があると信じています。勇気を持って一歩を踏み出してください。それが、会社や従業員、そして地域のためになる可能性があると思います。
- 貴重なお話をありがとうございました。
売主様:こちらこそ、ありがとうございました。この経験が、同じような悩みを抱える経営者の方々の参考になれば幸いです。