クロージングとは?M&Aにおける流れ・必要書類・前提条件を解説

M&Aにおけるクロージングとは、最終契約(株式譲渡契約など)に基づき、株式や事業などの譲渡を「実行」ないし「決済」する手続をいいます。クロージングを経てM&Aの一連の手続が完結することになります。この記事では、M&Aを検討している経営者に向けて、M&Aのクロージングまでの流れなどをわかりやすく解説します。

M&Aにおけるクロージング(決済、実行)とは

M&Aの流れのなかで、クロージングは、最終工程にあたる手続きです。最終契約書に基づき、譲受側より譲渡側へM&A取引における対価が支払われ、譲渡対象企業の株式や事業の引き渡しが完了することでクロージングとなります。このクロージングが完了して初めてM&Aが完了することになります。

クロージングが重要な理由

クロージングはM&Aにおける交渉や準備を終え最終契約書を締結している為、スムーズに終わるイメージの人も多いかと思います。しかし、実際は必要書類準備や譲渡の為の手続きが複雑で慎重に行う必要があります。クロージング内容に漏れがあれば、M&Aの有効性を証明できず、M&Aが完了しませんので譲渡側・譲受側共に慎重に実施する必要があります。

クロージングにかかる期間の目安

M&Aの準備に着手してからクロージングまでの期間の目安としては、どんなに短くて数か月~長いっと1年以上に及びます。

株式譲渡契約等の最終契約を締結してからクロージングまでの期間は、M&Aの前提条件(クロージング条件といいます)が無い場合は、最終契約書締結日と同日にクロージングします。中小企業のM&Aでは、これが一般的です。M&Aの前提条件がある場合には、その前提条件を満たすための期間として、最終契約からクロージングまで期間が空きますが、短い場合で1か月、長くても数か月、という期間が一般的です。

クロージングまでの流れ

M&Aにおけるクロージングまでの流れとしては

  • 第1段階:検討・準備
  • 第2段階:マッチング・交渉
  • 第3段階:最終契約・実行

上記の3つの段階に分けられます。それぞれについて詳しく解説します。

第1段階:検討・準備

譲渡側としては、M&Aにおける目標や譲渡条件を検討します。目標や譲渡条件を明確にすることがM&A成功のカギです。譲受側としては、自社のM&A戦略の選定や予算などの検討をします。

M&Aの成功を検証する為にもM&A戦略や予算を明確にしておくことが重要です。また、譲渡側・譲受側共にM&Aを進める為には、専門知識が必要不可欠な為、M&A仲介会社などのアドバイザリーの選定が必須と考えます。

第2段階:マッチング・交渉

譲渡側・譲受側共に第1段階で選定したM&A専門業者(アドバイザリー)と契約します。アドバイザリーと協議の上、交渉相手のリストを作成しアプローチを開始します。

初期段階では、ノンネームシートと呼ばれる会社名が特定されない書類を使うことが一般的です。ノーネームシートによるアプローチで興味を示した相手候補先と秘密保持契約書を締結し、譲渡対象会社の会社名や財務内容を開示し交渉が開始されます。

譲渡側・譲受側の交渉が整えば、デューデリジェンス(買収監査)実施の為、これまでの交渉内容をまとめた基本合意書を譲渡側・譲受側間で締結します。

第3段階:最終契約・実行

デューデリジェンス(買収監査・企業調査)

譲渡対象企業の企業価値やM&A後のリスク調査を、譲受側が専門家に依頼し実施します。

最終条件交渉

デューデリジェンス(買収監査・企業調査)の結果を踏まえ、M&A取引金額やクロージング条件の交渉など最終契約書締結に向けた交渉を行います。

最終契約

最終条件交渉で合意した内容を法的効力のある契約書にまとめ譲渡側・譲受側間で締結されます。

クロージングの準備・実行

最終契約書に応じて、クロージング準備を進めます。例えば、譲渡側・譲受側がクロージングにいたる手続として、取締役会や株主総会の承認決議を得るなどの対応が必要となります。

プレクロージングとは

プレクロージングとは、クロージングの準備のことを言います。クロージング条件が満たされ、クロージングの見通しが立った時点で行います。クロージングで確認すべきことをリスト化した「クロージングチェックリスト」を準備しておくと譲渡側・譲受側が共にクロージング内容を確認することができクロージングがスムーズに遂行できるでしょう。

ポストクロージングとは

クロージング後に実施しすることが義務付けられた、手続を言います。例えば、株式総会・取締役会で役員変更の決議をとること(株式譲渡の場合)や、クロージング時点での財務諸表の作成などが挙げられます。また、M&Aのクロージング時では予想できない将来の収益や価値に対して追加の対価を払うことを義務付けるアーンアウト条項の検証なども含まれます。譲受側としては、クロージング後もCOC条項に左右されず今まで通りの契約内容が継続することの確認が重要です。

M&Aスキーム別のクロージング

クロージングの内容は、M&Aにおける譲渡スキーム(手法)によって異なります。M&Aにおける以下の代表的な3つのスキームにおけるクロージングについて解説します。譲渡スキーム検討時やクロージング時に参考にしてください。

株式譲渡におけるクロージング

株式譲渡スキームは、譲渡対象企業の株式の全てまたは一部を譲受候補企業が取得することを言い、M&Aにおいて最も利用されるスキームの1つです。具体的なクロージング手続きは、対象会社によって異なります。

譲渡企業が上場会社の場合

株式譲渡を行う際には、証券保管振替機構や証券会社の口座を通して株主の権利を移転する必要があります。

譲渡企業が非上場会社(株券発行会社)の場合

株式譲渡を行う際には、株券の交付が必要で株券を譲渡した後、速やかに譲渡側と譲受側が共同で、株主名簿の書き換える必要があります。

譲渡企業が非上場会社(株券不発行会社)の場合

株券の交付が不要の為、譲渡側と譲受側が合意した最終契約書(株式譲渡契約書)締結のみでクロージングが可能となりますが、実際の最終契約書では譲受側から譲渡側へM&A取引対価の支払い完了を持ってクロージングとする旨が記載されることが一般的です。

事業譲渡におけるクロージング

事業譲渡スキームは、譲渡対象企業の事業の全てまたは一部を譲受候補企業が譲り受ける方法です。

最終契約の条件次第で譲渡対象の資産や負債選べることがメリットですが、一方で、資産や負債・従業員の雇用契約や取引先との取引契約などの移管にそれぞれ手続きが必要となります。また、譲渡対象企業がすべての事業を譲渡する際や事業の帳簿上の価額が会社の総資産に対して1/5を超える場合などは、株主総会の特別決議が必要となります。

合併・会社分割におけるクロージング

合併・会社分割スキームは、事業会社と不動産管理会社に分離して、事業会社のみを売却するなど組織再編を伴うM&A実施の際に多く使われるスキームです。

合併には、会社の権利を新たな法人に引き継がせる新設合併と、1つの会社に合併させる吸収合併があります。また会社分割にも事業を新設した会社に引き継がせる新設分割とすでにある会社に引き継がせる吸収分割の2つがあります。合併や会社分割スキームを活用したクロージングには、株主総会の特別決議や債権者保護手続きが必要とです。

クロージングでの必要書類

クロージングに係る準備書類については、スキーム(手法)により異なるため、この記事では株式譲渡を例にあげて紹介します。譲渡側・譲受側それぞれについて解説しますので、参考にしてください。

譲渡側のクロージング書類

  • 株式譲渡承認請求の写し
  • 株主が譲渡対象会社に対して、株主が保有する株式を第三者へ譲渡する承認を求める為に提出する書面。
  • 株式譲渡承認決議の議事録及び株式譲渡承認通知書

株式譲渡承認決議の議事録は、株主から提出された株式譲渡承認請求書を受け、譲渡対象会社が株式譲渡を承認したこと記した議事録のことを言います。株式譲渡承認通知書は、株式譲渡を会社として承認したことを株主に伝えるための書面を言います。

株主名簿記載事項書換請求書

株式譲渡完了後、譲渡側と譲受側の共同で譲渡対象会社に対して、株主名簿の記載事項の書換を依頼する為の書面で、この書面の提出を受けて譲渡会社は株主名簿を変更します。

株主名簿

譲渡対象会社のクロージング後の現株主が記載された名簿を言います。これらの書類の他に、株主の印鑑証明書や複数人の株主がいる場合、株主代表に諸手続きを依頼する際の委任状などの準備も必要となります。

譲受側のクロージング書類

クロージング書類の受領書

譲渡側より提出されたクロージング書類を受領際に、譲受側から譲渡側に提出される受領書を言います。また、クロージング時に、譲渡対象会社の実印や銀行印、通帳やネットバンキングのPWなど重要物品の引き渡しを受けた際には、重要物品受領書等を準備します。

印鑑証明書、登記事項証明書など

クロージング手続きにおける書類は、法的拘束力を有するものが多い為、印鑑証明書や登記事項証明書の準備も必要となります。

クロージング条件とは

M&Aでは最終契約書でクロージング条件を記載し、譲渡側・譲受側共に条件を履行することでクロージングが実施されます。クロージング条件の内容やポイントについて解説します。参考にしてください。

M&Aにおける「クロージング条件」とは

最終契約書にクロージングを実施する為の条件と条件を履行する為の期間を記載し、譲渡側・譲受側共にクロージング条件を履行されなければ、そのM&Aはクロージングしません。

クロージング条件不履行の場合、早急に条件を履行するか最終契約書に定められたクロージング条件履行延期期間までクロージングが延期されることになります。最悪の場合、ここまで時間を掛けて交渉を進めてきたM&A自体がブレイク(中止)することもあります。

クロージング条件の例

クロージング条件の代表例について解説します。

MAC条項

MAC条項とは、クロージング日において譲渡側の財務状況や経営状況などに重大な悪影響を与える変化が生じていないことを条件とする条項のことを言います。

キーマン条項

キーマン条項とは、M&A後も譲渡側の特定の役員や従業員が一定期間において、譲渡対象会社に継続して従事する意思を確認することを条件とする条項のことを言います。一定期間とは3~5年で定められることが多いです。

COC条項

COC条項とは、クロージングが行われ譲渡対象会社の支配権が変更された場合、譲渡対象会社と取引先間の契約に制限が設けられたり、契約を一方的に解除できたりできる条項のことを言います。

クロージング後の経営統合に向けて

クロージング後に行われる経営統合の作業をPMI(統合プロセス)と言います。

譲受側のM&Aの目的は、譲渡対象企業との経営統合で得られるシナジーの享受にあるので、適切にPMI(統合プロセス)が実施されるかがM&A成功への重要なポイントとなります。PMI(統合プロセス)は、すべてのプロセスがクロージング後に行うとは限りません。

PMI(統合プロセス)は、多肢に渡ることからクロージング前から準備を進めておくことが重要です。

PMI(統合プロセス)における注意点

PMI(統合プロセス)は、適切に短期間で実施することが重要です。PMI(統合プロセス)に時間がかかると、M&Aにおけるシナジー効果も先延ばしになります。また、丁寧且つ適切に実施しなければ、譲渡対象会社に従事する従業員が退職したり、今後の事業運営に力を入れなったりするなどのリスクがあります。

PMI(統合プロセス)計画は、クロージング前から準備をしておくことが重要でしょう。しかし、クロージング前の重要な情報交換はガンジャンビング(フライング)規制に該当する場合がありますので、注意が必要です。

M&Aのクロージング(決済、実行)のまとめ

M&Aは、クロージングするまでは何が起こるか分からないと言われるほど、最後まで慎重に行う必要があります。クロージングしないと、長きにわたり譲渡側と譲受側が真摯に向き合いハードな交渉を進めてきたにも関わらず、M&A自体の延期やブレイク(中止)することなどもあります。

弊社みつきコンサルティングは、M&A専門の仲介会社として多くのクロージングに立ち会って参りました。これまでの経験値を生かし優秀なアドバイザーが最後までしっかりとご支援させて頂いております。

M&Aのご検討の際は是非一度、弊社みつきコンサルティングにご相談くださいませ。

著者

潟野和徳
潟野和徳名古屋法人部長
人材支援会社にて、海外人材の採用・紹介事業のチームを率いて新規開拓・人材開発に従事。みつきコンサルティングでは、強みを生かし人材会社・日本語学校等の案件を中心に工事業・広告・IT業など多種に渡る案件支援を行う。
監修:みつき税理士法人

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