M&A増加の3つの理由と背景|会社売却は今後も増える?

近年、国内におけるM&Aの件数は増加しており、2024年は年間4,700件と過去最多となりました。本記事では、M&Aが増加している理由とともに、M&A市場の今後の展開に関する予測を解説します。これからM&Aを成功させるコツについても解説するため、参考にしてください。 

国内企業のM&Aは増加傾向にある 

国内企業のM&A件数は、基本的に増加傾向です。MARR Online「グラフで見るM&A動向」によると、1985年以降の国内企業の状況は、リーマンショックや東日本大地震といった一時的な不況を除き、M&A件数は増加しています。具体的には、同「2022年のM&A回顧」によると、2022年のM&A件数は、前年から0.6%増加して4,304件で、2年連続で最多件数を更新している状況です。2023年は4,015件と微減になったものの、2025年1月のレコフデータの発表によると、2024年は4,700件と過去最多となりました。国内企業のM&A件数は今後ますます増加すると考えられます。 

国内企業のM&Aが増加している3つの理由 

なぜ国内企業のM&Aが増加しているのでしょうか。ここでは、3つの理由を解説します。 

事業承継型M&Aの増加 

国内企業のM&Aが増加している理由の1つとして、中小企業の後継者不足の問題があります。帝国データバンクが2024年11月に発表した全国「後継者不在率」動向調査(2024年)によると、全国の後継者不在率は52.1%になりました。 業種別に見ると、多少の高低はありますが、40~50%の不在率であり、およそ全業種にわたり約半数の中小企業が後継者不在の状況にあります。

業種別・業界別の後継者不在率の推移

そこで、後継者不足の問題を解決するため、事業承継型のM&Aを実施するケースが増えています。 

経営者の高齢化 

M&Aの増加には、経営者の高齢化の問題も絡んでいます。東京商工リサーチが実施した調査結果「全国社長の年齢」によれば、2022年の社長の平均年齢は63.02歳でした。また、60代以上の社長の構成比が初めて6割を超えています。 

経営者が高齢になると後継者への事業の引き継ぎを意識するようになりますが、前述のとおり中小企業の後継者は不足している状況です。そのため、事業承継型のM&Aにより後継者をみつけるパターンが増加しています。 

人口減少による人手不足 

M&Aの増加の理由には、人口減少による人手不足も挙げられます。総務省「情報通信に関する現状報告」によれば、生産年齢人口(15〜64歳)は1995年から減少し続けている状況です。2050年には、さらに5,275万人の生産年齢人口が減少するという予想が立てられています。 

生産年齢人口が減少すれば、企業同士の人材獲得の競争は激しくなります。人材確保がより一層難しくなった結果、事業の運営が難しくなるケースも珍しくありません。M&Aは人材確保の手段としても考えられています。 

会社売却は今後も増える? 

M&A市場は、今後どのように変化するのでしょうか。今後の展開予測について解説します。 

後継者不足によるM&Aが高水準で推移 

後継者不足の問題を解決する手段として、すでに多くの企業がM&Aを行っています。この状況は、今後ますます増えると予測されています。経営者の高齢化や生産年齢人口の減少などはさらに深刻化する可能性が高く、後継者不足に悩む企業もより多くなると考えられるからです。 

後継者不足の問題解決の手段としてM&Aを実施する企業が増えれば、M&A市場もさらに拡大するでしょう。 

海外(クロスボーダー)M&Aの増加 

今後は国内企業同士のM&Aだけでなく、クロスボーダーM&Aも増えると考えられます。クロスボーダーM&Aとは、譲渡側または譲受側のどちらかが外国企業であるM&Aです。 

今後も日本の人口減少は続き、市場も縮小していくと予想されています。新たな市場を獲得するための手段として、すでに海外に目を向けている企業も少なくありません。今後は、企業規模にかかわらずクロスボーダーM&Aを実施する企業が増える可能性があります。 

小規模M&Aの増加 

日本国内のM&A市場においても、今後は小規模M&Aが増える可能性があります。海外では、M&Aでの譲渡を前提に事業を開始するケースも珍しくありません。そのような小規模M&Aは日本ではまだ少数派であるものの、今後は増加していくと考えられています。現在でも、ハイテクノロジー業や金融業などでは少しずつ小規模M&Aが増えています。 

M&Aとは 

M&Aとは、企業同士の合併や譲受のことです。「Mergers and Acquisitions」を略してM&Aとよばれています。複数の企業がまとまって1つになる場合だけでなく、既存の企業が他の企業を取り込む場合もM&Aに含まれます。従来は大規模な企業のみが行っていましたが、近年は中小企業の間でもM&Aが盛んになってきました。 

M&Aを実施する主な目的 

M&Aを実施する目的は、譲渡側と譲受側によって異なります。それぞれについてまとめると、以下のとおりです。 

譲渡側

  • 後継者の確保 
  • 従業員の雇用の維持 
  • 売却益の取得 

譲受側

  • 事業拡大 
  • 人材確保 
  • 新しいノウハウや技術の獲得 

M&Aを行えば、譲渡側と譲受側にとってさまざまなメリットがあります。双方の条件が合致すれば目的を果たせるため、M&Aを実施する企業は増えている状況です。 

M&Aの種類・手法 

一般的なM&Aの手法としては、合併、株式譲渡、事業譲渡、会社分割が挙げられます。合併は複数の企業の法人格を1つにまとめる方法です。1つの企業のみ存続して他の企業を吸収する方法と、新しく設立した企業にすべての企業を統合する方法があります。 

株式譲渡は、譲渡側が保有する株式を譲受側に渡し、その対価として譲受側が現金を譲渡側へ支払います。また、事業譲渡は、会社の事業の一部またはすべてを譲渡する手法です。会社分割は、既存の企業を分割して法人格を分け、それぞれに資産や事業などを移転します。 

国内企業がM&Aを成功させるコツ 

国内企業がM&Aを成功させるには、さまざまなコツがあります。その一部を紹介します。 

シナジー(相乗効果)を慎重に検討する 

M&Aを成功させるには、自社と相手企業とのかけ合わせによりどのようなシナジー(相乗効果)を得られるか検討しましょう。シナジー(相乗効果)とは、複数のものが作用し合い、より高い効果を発揮することです。シナジー(相乗効果)はM&Aの大きなメリットの1つであるため、よく確認する必要があります。 

デューデリジェンス(買収監査・企業調査)を徹底する 

譲受企業にとっては、デューデリジェンス(買収監査・企業調査)も重要です。デューデリジェンス(買収監査・企業調査)とは、M&Aの契約を締結する前に相手企業について実施する調査です。調査を徹底すれば、相手企業の問題やリスクなどをくわしく把握できます。その内容は、契約内容や取引価格への反映も可能です。 

M&Aに関する専門家のサポートを利用する 

M&Aを実施するうえでは、税務、財務、法務、労務といった幅広い分野について知識が必要です。しかし、それらの知識をすべて完璧に網羅している企業は多くありません。M&Aを円滑に進めるには、専門家のサポートを受けると安心です。M&Aを得意とする専門家もいるため、よく相談しましょう。 

M&Aが増加している理由・背景のまとめ 

国内企業のM&Aは増加しており、今後もその傾向は続くと考えられます。特に後継者不在の問題を解消する手段として事業承継型のM&Aを実施するケースが目立っている状況です。 

みつきコンサルティングは、経営コンサルティング経験者も多く在籍するM&A仲介会社です。税理士法人グループであり、M&A以外の方法も視野に入れた幅広いサポートができます。また、実際にM&Aを進める際も、事業内容をくわしく分析したうえでシナジー(相乗効果)を期待できる候補先を選定します。M&Aを成功させるために、ぜひご相談ください。 

著者

西尾崇
西尾崇事業法人第三部長
宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人

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