M&A仲介会社は、企業の譲渡収を支援する専門家集団です。中小企業の事業承継問題の解決に重要な役割を果たし、譲渡オーナーと譲受企業の間に立って交渉を仲介します。本記事では、M&A仲介会社の業務内容、メリット、選び方、費用について詳しく解説します。
M&A仲介会社とは
M&A仲介とは、M&Aアドバイザー(M&Aコンサルタントともいいます)が、譲渡側と譲受側のM&Aに関する交渉を仲介し、中立の立場でM&Aの成立に向けて助言することをいいます。M&A仲介会社は、このようなM&Aアドバイザーの集まりです。
▷関連:M&Aコンサルタントとは?依頼メリット・業務内容・費用・選び方
M&Aの相談先はM&A仲介会社が多い
M&Aの成約までには、法務・税務・業法の確認・対応や、適切な企業価値評価、双方の利害調整、成約後のフォローなど、広範にわたる支援が必要になります。それらの場面ごとの専門家は多数存在しますが、全体を通してサポートする機関がM&Aブティックと言われるM&A専門会社になります。
そのなかでもM&A仲介会社は、日本で行われるM&Aの大部分をサポートしています。人間の結婚と同様、お相手候補先との良い出会いが一番大事ですが、力量のあるM&A仲介会社は、縁談進行の助言だけでなく、そもそもの出会いの創出に長けている、という特徴があります。
▷関連:M&Aブティック・ファーム|仲介会社やFAとの違い・業務内容とは
M&A仲介会社の特徴
M&A仲介会社の主な特徴は以下の通りです。
中立的な立場
譲渡オーナーと譲受企業手の双方と提携仲介契約を結び、双方の利益を考慮しながらM&Aを進めます。
幅広いネットワーク
多数の企業情報を保有し、適切なマッチングを行います。
専門知識
M&Aに関する法務、財務、税務などの専門知識を持つスタッフが在籍しています。
一貫したサポート
企業価値評価からお相手探し、交渉、契約締結まで、M&Aプロセス全体をサポートします。
M&A仲介業の現状
近年、中小企業の後継者不足問題が深刻化し、M&Aによる事業承継が注目されています。これに伴い、M&A仲介業界も拡大傾向にあります。2021年に業界団体(M&A仲介協会、その後改称)が設立されましたが、2024に問題のある買い手企業とそれを支援したM&A仲介会社(報道によると15社)の存在が発覚しました。業界の健全な発展と取引の適正化に向けた取り組みが今後も必要です。
参考:日本経済新聞「悪質な中小M&A、仲介15社に再発防止指示 経産省」
M&A仲介会社の費用
「成功報酬制」を謳うM&A仲介会社は多いですが、その中には「中間金」が生じる会社もあります。また、「中間金」が不要の「完全成功報酬制」の会社の場合であっても、最低報酬金額での柔軟性や、手数料率の部分で違いがあることもあるため、しっかり確認する必要があります。
▷関連:M&Aの手数料は、いつ支払う?着手金・中間金・成功報酬の時期とは
報酬の種類
M&A仲介会社に支払う可能性のある費用を、M&Aのプロセスに沿って時系列で紹介します。
相談料
M&Aを依頼する前の相談時に発生する費用です。M&Aを行った方が良いのか、希望のお相手が見つかりそうかなど、初期的な相談に対する手数料になります。仲介会社は、一般に無料です。
着手金
着手金は、極一部の仲介会社でのみ発生しますす。着手金がかかる会社では、50万円から500万円まで、企業の総資産額に応じて課金されるケースが一般的で、提携仲介契約を締結すると発生する費用となります。着手金を払うことは、譲渡側の売却意思を確認するために設定している会社が多いため、交渉次第で値下げは検討しもらえるケースもありますが、無料になることは難しいようです。
月額報酬
月額報酬(リテイナーフィーとも呼ばれます)の設定がある場合は数万円から数十万円が一般的ですが、仲介会社では一般に無料です。
中間金
一部の仲介会社では、譲受側との基本合意契約を締結時に、想定される成功報酬額の10%等を支払うこととしています。支払った中間金は、そのまま成約した時には、成功報酬から控除されます。
デューデリジェンス費用
デューデリジェンスとは、買収監査を指し、企業の価値、将来の収益性、リスクの調査および分析を行うプロセスです。デューデリジェンス費用は、調査を実施する対象や規模、依頼する専門家の数などにより費用額が変動しますが、すべて譲受企業の負担で行います。
成功報酬
譲渡代金等を基準として計算されます。計算方式はレーマン方式とも呼ばれ、各社が独自の設定を行っています。最低報酬額の設定がある会社が一般的です。
▷関連:M&Aの「完全」成功報酬とは?利点と欠点・中小企業の相場・経費性
成功報酬制が多い
成功報酬型は、M&Aが成立した場合にのみ報酬を支払う方式です。これが最も一般的な費用体系です。
特徴
- リスクが低い:M&Aが成立しなければ費用は発生しません。
- モチベーション:仲介会社にとってM&A成立へのインセンティブが高くなります。
- 高額になる可能性:成功報酬は譲渡価格の一定割合となるため、高額になる場合があります。
計算例
一般的に、いわゆる「レーマン方式」により、譲渡価格の1〜5%程度が成功報酬として設定されることが多いです。例えば、以下のように算定されます。
譲渡価格5億円の場合
5億円×5%=2,500万円
譲渡価格8億円の場合
5億円×5%+(8億円-5億円)×4%=3,700万円
ただし、案件の規模や複雑さによって変動する可能性があります。また、最低報酬額が設定されていることが一般的で、2,000万円や2,500万円などが多いです。
▷関連:M&Aの成功報酬の計算方法は?「レーマン方式」について解説
M&A仲介会社に相談するメリット
M&A仲介会社を利用することで、様々なメリットが得られます。その主な利点を解説します。
最適なお相手候補の紹介
M&A仲介会社の最大の強みは、豊富な情報網を活用して最適な相手先を見つけ出せることです。具体的には、以下のような点で優れており、最も相乗効果の高い、条件の良い相手先と巡り合えるチャンスが広がります。これは、企業の将来の成長や発展に大きな影響を与える可能性があります。
広範なネットワーク
M&A仲介会社は多数の企業情報を保有しており、売り手企業だけでは思いもつかなかったような理想的なパートナーを見つけ出せる可能性が高まります。
業界知識
業歴のあるM&A仲介会社や、経営コンサルティング等のバックボーンのあるM&A仲介会社であれば、様々な業界の動向や主要プレイヤーについての深い知識を持っています。
マッチング技術
AI技術を活用したマッチングシステムを導入している仲介会社が増えており、効率的なマッチングが可能です。
非公開情報へのアクセス
M&A仲介会社は、公開されていない譲渡または譲受情報にもアクセスできる場合があります。
▷関連:M&A案件(相手方)の探し方|仲介会社・銀行・士業などを解説
円滑・円満な交渉
M&A仲介会社を介することで、交渉がスムーズに進むというメリットがあります。経営者同士が旧知の場合に人間関係を壊してしまうような不幸な事態も避けられ、円満なM&Aの実現が期待できます。
中立的な立場
M&A仲介会社は譲渡側と譲受側の両方と契約を結んでいるため、中立的な立場で交渉を進めることができます。
感情的対立の回避
直接交渉では感情的になりがちな場面でも、仲介会社が間に入ることで冷静な判断が可能になります。
専門的な交渉スキル
M&A仲介会社のアドバイザーは交渉のプロフェッショナルであり、効果的な交渉戦略を立てることができます。
時間管理
M&A仲介会社が交渉のスケジュールを管理することで、適切なペースでプロセスを進行させることができます。
▷関連:M&Aの基本的な流れ|中小企業の会社売却のプロセス・進め方とは
専門的・総合的な知見の提供
M&A仲介会社は、M&Aに関する幅広い専門知識を持っています。専門知識を総合的に活用することで、M&Aプロセス全体を効率的に進めることができます。また、潜在的なリスクを事前に把握し、対策を講じることも可能になります。
財務・会計・税務
企業価値評価や財務デューデリジェンスなど、財務面での専門的なアドバイスが得られます。また、M&Aに伴う税務上の影響や最適なスキームの提案など、税務面での助言が得られます。
法務・党務
各種契約書の作成や法的リスクの評価など、法務面でのサポートが受けられます。
人事
従業員の処遇や労働条件の調整など、人事面でのアドバイスも受けられます。
PMI(Post Merger Integration)
M&A後の統合プロセスについても、経験に基づいた助言が得られることがあります。
▷関連:M&A後の経営統合(PMI)とは?必要性・流れ・方法・成功事例
時間と労力の節約
M&A仲介会社を利用することで、経営者は以下のような点で時間と労力を節約できます。経営者は通常の事業運営に専念しながら、M&Aを進めることが可能になります。
相手先探し
仲介会社のネットワークを活用することで、早期かつ効率的に相手先を見つけることができます。
資料作成
各種資料の作成を仲介会社が代行することで、経営者の負担が軽減されます。
交渉
仲介会社が交渉を代行することで、経営者は本業に集中できます。
専門家との連携
法務や税務などの専門家との連携も仲介会社が担当します。
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守秘性の確保
M&Aは極めて機密性の高い取引です。M&A仲介会社を利用することで、以下のような点で守秘性を確保できます。M&Aの検討が従業員や取引先に漏れるリスクを最小限に抑えることができます。
匿名での情報提供
初期段階では企業名を伏せた形で譲渡企業の情報が提供されます。
情報管理体制
コンプライアンス体制が確立されたM&A仲介会社であれば、厳格な情報管理体制を整えています。
秘密保持契約の活用
適切なタイミングで秘密保持契約を締結します。
情報開示の管理
経験豊富なM&A仲介会社のアドバイザーであれば、譲受企業に開示する情報の範囲と時期を適切に管理できます。
▷関連:秘密保持契約書とは|M&Aでの締結時期・雛形・注意するポイント
M&A仲介会社と他業者の違い
M&A仲介会社の他に、M&Aを支援する主な業者として、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)、会計士、税理士、弁護士などがあります。本章ではFA・士業事務所とM&A仲介の役割の違いについて解説します。
FAとの違い
FA(ファイナンシャル・アドバイザー)とM&A仲介会社の主な違いは以下の通りです。
契約形態
仲介:通常、譲渡側と譲受側の両方と契約を結びます。
FA:一般的に売り手または買い手のどちらか一方と契約を結びます。
中立性
仲介:譲渡側と譲受側の両方の利益を考慮し、中立的な立場で交渉を進めます。
FA:契約した側の利益を最大化することを目的とします。
報酬体系
仲介:成功報酬型が一般的で、M&Aが成立した場合に報酬を受け取ります。
FA:固定報酬と成功報酬の組み合わせが多く、プロジェクトの進行に応じて報酬を受け取ります。
サービスの範囲
仲介:マッチングから契約締結までの全プロセスをカバーします。
FA:マッチング支援を委託する場合は、サービス範囲は仲介会社と実質的に同じです。
▷関連:FA(ファイナンシャル・アドバイザー)とM&A仲介会社の違い
公認会計士・税理士との違い
公認会計士や税理士とM&A仲介会社の主な違いは以下の通りです。
専門分野
M&A仲介:M&Aプロセス全体をカバーする総合的な知識を持っています。
会計士・税理士:会計・税務面での専門的な知識を持っています。
サービスの範囲
M&A仲介:マッチングから契約締結まで、M&Aの全プロセスをサポートします。
会計士・税理士:主に譲渡に係る税務スキームの検討、デューデリジェンスでの必要資料準備・ヒアリング応対の局面でサポートします。
企業価値評価
M&A仲介:企業価値評価を行い、適切な譲渡価格の設定をサポートします。
弁護士:通常、企業価値評価は行いません。セカンドオピニオンとして助言することはあります。
マッチング機能
M&A仲介:豊富な企業情報を持ち、積極的にマッチングを行います。
会計士・税理士:通常、マッチング機能は持っていません。
交渉力
M&A仲介:交渉のプロフェッショナルとして、効果的な交渉を行います。
会計士・税理士:通常、交渉の主体とはなりません。
▷関連:M&Aでの公認会計士の必要性・重要性とは?役割・税理士との違い
▷関連:M&Aでの税理士の役割とは?業務範囲や報酬相場、選び方まで解説
弁護士との違い
弁護士とM&A仲介会社の主な違いは以下の通りです。
専門分野
M&A仲介:M&Aプロセス全体をカバーする総合的な知識を持っています。
弁護士:法務面での専門的な知識を持っています。
サービスの範囲
M&A仲介:マッチングから契約締結まで、M&Aの全プロセスをサポートします。
弁護士:主に契約書の作成や法的リスクの評価などの法務面でサポートします。
マッチング機能
M&A仲介:豊富な企業情報を持ち、積極的にマッチングを行います。
弁護士:通常、マッチング機能は持っていません。
▷関連:弁護士のM&Aにおける役割|依頼する利点と欠点・報酬相場とは
マッチングサイトとの違い
M&A仲介会社とマッチングサイトの主な違いは以下の通りです。
サービスの範囲
M&A仲介:マッチングから契約締結まで、M&Aの全プロセスを専門家がサポートします。
マッチングサイト:主にマッチング機能の提供に特化しており、その後のプロセスは利用者自身で進める必要があります。
専門的サポート
M&A仲介:経験豊富な専門家が交渉や価格設定などの重要な局面でアドバイスを提供します。
マッチングサイト:基本的に自力でM&Aを進める必要があり、専門的なサポートは限定的です。
費用
M&A仲介:一般的に成功報酬型で、M&Aが成立した場合に比較的高額な報酬が発生します。
マッチングサイト:多くの場合、利用料が無料または低額で、成功報酬も仲介会社と比べて低めに設定されています。
マッチングの範囲
M&A仲介:非公開情報も含めた幅広いネットワークを活用してマッチングを行います。
マッチングサイト:プラットフォームに登録された情報のみでマッチングを行うため、選択肢が限定される可能性があります。
時間効率
M&A仲介:専門家のサポートにより、効率的にプロセスを進められる可能性が高いです。
マッチングサイト:自力で進める必要があるため、時間がかかる場合があります
▷関連:M&Aのマッチングサイト|個人も利用できるプラットフォームとは
M&A仲介会社の選び方
M&A仲介会社は、数多くあるため、選ぶ際は以下の点を考慮することが重要です。現状では資格・許認可がなくてもサービス提供できるため、信頼できるM&A仲介会社と、単なる営業会社との違いを見極めることが重要です。
仲介会社の社風
M&A仲介会社は、業界の歴史が浅いこともあり、他業界の営業職で活躍していた方が集まって設立したケースが殆どです。そのため、営業色が極めて強い社風になります。近年は、それらのM&A仲介会社から独立して新たな仲介会社を設立するケースも多いですが、やはり営業色の強い組織になります。
これらとは別に、少数派ですが、以下のような設立背景のM&A仲介会社も増えています。これらの会社は、その設立(出身)母体となった組織の社風を残しています。
- 会計事務所の一部門(または別会社)として設立
- コンサルティング会社(会計系が多い)の一部門(または別会社)として設立
- 証券・銀行等の金融機関出身者がネットワークを組んで設立
- 不動産会社など異業種による事業多角化として設立
▷関連:M&Aの相談先は誰がよい?相談先一覧とメリット・デメリットを解説
仲介会社は「大手」や「上場」が良い?
大手M&A仲介会社を選ぶ最大の魅力は、安心感にあります。M&A仲介業界には様々な企業が存在し、その実態が不透明な場合も少なくありません。会社の譲渡という重要な決断を任せる仲介会社を選ぶ際、各社の情報が乏しいため判断に迷うことがあります。そんなとき、大手M&A仲介会社なら一応は安心、というのが人情です。大手ならではの安心感を重視する経営者は一定数存在します。
M&Aの成否はコンサルタント個人の能力に依存
当然ながら、大手M&A仲介会社でも担当者の能力は、様々です。顧客満足は、コンサルタント個人の力量に負う部分が極めて大きく、仲介会社の「看板」とは無関係です。実績豊富な中小M&A仲介の担当者と、経験の浅い大手M&A仲介の担当者のどちらに任せる方がM&Aの成功確率が高いかは、言を俟ちません。
大手仲介会社は手数料が高額になる可能性
M&A仲介大手の場合、仲介料が高くなりやすいという点に注意する必要があります。成約時の成功報酬に加えて、着手金や中間金などの途中費用が発生することがあり、仲介料が高額になりがちです。成約しないかもしれないのに手数料支払が先行するわけです。また、完全成功報酬制を掲げている仲介会社でも、最低手数料の交渉に応じないケースが多く、この面で料金が高めになることがあります。
真の意味で寄り添ってくれるか
上場している大手M&A仲介会社は、一般株主を意識するあまり短期的な利益を追求しがちになる可能性があります。また、売上拡大志向が強く、営業マンに課せられるノルマも苛烈であることがあります。そのため、経営者の想いに十分に寄り添わず、最適な相手を探すことよりも、「買ってくれやすい相手に早く売却しよう」となる可能性があります。「譲渡価格等の条件が悪くても構わないから早く売却したい」という経営者が多いはずがありません。また、大手仲介会社は、どうしても営業重視で、一人の担当者が多くの案件を抱えています。そのため、案件に優先順位が付けられ、いつの間にか放置されてしまうというケースがあります。
▷関連:M&A仲介会社の売上高・成約件数の比較|大手に依頼すべきか?
仲介会社の成り立ち
M&A仲介会社のバックボーンを確認しておくことも重要です。それにより、仲介会社の社風が異なるため、業務への取り組み姿勢、ひいては顧客の利益より自社の利益を重視していないか、といった根本的な違いが生じます。一般に、会計事務所系の仲介会社は高度な倫理観を持っていることが多く、経営コンサルティングから派生した仲介会社も気質は真面目であることが多いといえます。
現存する大多数の仲介会社は営業マンの集合体ですが、その内実は様々となります。2024年に問題となった不良買い手事案でも、15社ものM&A仲介会社が関与しており、その中には上場している仲介会社も含まれているようです。
参考:読売新聞「M&Aで売り手企業の資産移し倒産させる」
その他のチェックポイント
上記の視点以外にも、以下のような点を慎重に確認すると良いでしょう。
実績と経験
一般に譲渡側オーナーはM&A未経験の方がほとんどでしょう。したがって、M&Aを進めるにあたっては、担当者の経験・実績が豊かであるか、自社と同じ業界での実績経験はあるか、という点は相談先を選ぶうえで最も重要な点の一つといえます。
手数料等の契約条件
契約期間、解約時の条件、手数料体系、専任契約かどうかなど事前に確認すべき事項は多くあります。しっかりと契約書に目を通し、理解納得できるまで仲介会社に説明してもらうことが重要です。
利益相反問題を知っておく
M&A仲介には利益相反が指摘されます。このような側面も把握した上で、依頼すると良いでしょう。
利益相反とは?
仲介契約においては、一方の利益を図ると、他方の利益が損なわれるといわれています。例えば、売買において、譲渡側は「高く」売りたいですし、譲受側は「安く」買いたいと思うのは当然のことですが、仲介会社が一方の利益保護に動いた場合、他方が利益を損なうということが『利益相反』と呼ばれています。
▷関連:M&A仲介会社の利益相反問題とは?M&A仲介会社の選び方
譲受側を優遇する可能性の存在
仲介会社にとって、リピーターとなる可能性が高い譲受企業はお得意様になります。仲介会社の中には、譲受側の利益のみ追求した進め方をする会社もあるのは事実です。M&A仲介会社は、譲渡側と譲受側の妥協点を探ってM&Aを成立させるので、譲渡側が期待していた条件や金額で売却できないことも散見されます。
▷関連:事業承継の相談先は税理士・公認会計士がおすすめ!選び方・費用相場
M&A仲介会社の業務内容
M&A仲介会社が提供する主な業務内容は以下の通りです。
1. M&A戦略立案サポート
M&A仲介会社は、企業のM&A戦略立案をサポートします。これには以下のような内容が含まれます。
- 企業の現状分析
- M&Aの目的の明確化
- 最適なM&A手法の選定
- タイムラインの作成
M&A戦略は企業の将来を左右する重要な決定であるため、経験豊富なアドバイザーのサポートは有益です。
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2. 譲受企業探し(マッチング)
M&A仲介会社の重要な役割の一つが、適切なお相手候補(譲受企業)を見つけることです。この過程では以下のような作業が行われます。
- 企業データベースの活用
- ネットワークを通じた情報収集
- 匿名での企業情報の提供
- 初期的な興味を示した企業との調整
マッチングは単に企業を紹介するだけでなく、双方の企業文化や将来のシナジーなども考慮して行われます。
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3. 譲渡企業に対する企業価値評価
企業価値評価(バリュエーション)は、M&Aにおいて非常に重要なプロセスです。M&A仲介会社は以下のような方法で企業価値を算出します。
- 純資産法(年買法)
- DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)
- 類似会社比較法(マルチプル法)
これらの方法を組み合わせて、適切な企業価値を算出します。また、無形資産や将来の成長性なども考慮に入れます。
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4. 各種資料の作成
M&Aプロセスでは多くの書類が必要となります。M&A仲介会社は以下のような資料(ドラフト)の作成をサポートします。
- ノンネームシート
- 企業概要書
- デューデリジェンス資料
これらの資料は法的な効力を持つものも多いため、専門家のサポートは重要です。
▷関連:企業概要書(IM)とノンネームの違い・記載内容・サンプルひな形
5. 条件交渉の代行
M&A仲介会社は、譲渡オーナーと譲受企業の間に立って条件交渉を行います。主な交渉項目には以下のようなものがあります。
- 譲渡価格、支払条件
- 譲渡オーナー・役員・従業員の処遇
- 経営権の移行方法
- 表明保証条項、補償条項
交渉では双方の利益を考慮しながら、合意点を見出していきます。
▷関連:M&A条件の交渉ポイント!交渉の流れ・注意点・確認事項も解説
6. トップ面談時の立ち会い
M&Aプロセスの中で、譲渡側と譲受側のトップ同士が直接会って話し合う機会があります。M&A仲介会社はこの面談に立ち会い、以下のようなサポートを行います。
- 議題の設定
- コミュニケーションの調整
- 重要ポイントの確認
- 面談後のフォローアップ
トップ面談は双方の信頼関係を築く重要な機会であり、M&A仲介会社の役割は重要です。
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7. 各種契約書の作成
M&Aでは様々な契約書が必要となります。M&A仲介会社は以下のような契約書(ドラフト)の作成をサポートします。
- 秘密保持契約書
- 基本合意書
- 株式譲渡契約書、事業譲渡契約書
- クロージング関係書類(各種議事録など)
- 株主間契約書
これらの契約書は法的な専門知識が必要となるため、弁護士や司法書士とも連携しながら作成されます。
▷関連:【図解】M&Aに必要な契約書は?NDA・仲介契約から最終契約まで
8. デューデリジェンスの調整と立ち会い
デューデリジェンス(買収監査)は、譲受企業が譲渡企業の詳細な調査を行うプロセスです。M&A仲介会社は以下のような役割を果たします。
- デューデリジェンスの範囲の決定
- 調査チームの編成
- 資料の準備と提供
- 質問への対応
- 調査結果の取りまとめ
デューデリジェンスは専門的な知識が必要な作業であり、M&A仲介会社のサポートは重要です。
▷関連:デューデリジェンスの調査項目|種類・費用相場・注意点とは?
9. 契約締結時の立ち会い
最終的な契約締結の際、M&A仲介会社は以下のようなサポートを行います:
- 契約内容の最終確認
- 署名手続きの調整
- 必要書類の準備
- 関係者への説明
契約締結は法的に重要な瞬間であり、M&A仲介会社の立ち会いにより、スムーズな進行が可能となります。
▷関連:最終契約書(DA)はM&Aで最重要の契約!記載項目・注意点とは
10. クロージング支援
契約締結後、実際に株式や事業が移転されるクロージング(決済)の段階でも、M&A仲介会社は以下のようなサポートを行います。
- 株式譲渡手続(事業譲渡手続)の調整
- 代金支払の確認
- 各種届出書類の作成支援
- 従業員説明会の開催支援
クロージングは複雑な手続きが必要となるため、M&A仲介会社のサポートは不可欠です。
▷関連:クロージングとは?M&Aにおける流れ・必要書類・前提条件を解説
M&A仲介のまとめ
M&A仲介会社は、企業のM&Aプロセスを総合的にサポートする重要な存在です。選定の際は、実績や専門性、社風(会社の成り立ち)、費用体系などを慎重に検討し、自社に最適な仲介会社を選ぶことが重要です。M&A仲介会社の適切な選択が、M&Aの成功につながるでしょう。
みつきコンサルティングは、税理士法人グループが母体の、M&A仲介に強い経営コンサルティング会社です。業歴が長く、M&Aの実績・経験が豊富なアドバイザーが担当します。M&Aなら、みつきコンサルティングにご相談ください。
著者
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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