美容室のM&Aを検討する際には、ポイントを踏まえて計画を立てることが重要です。本記事では美容室のM&Aにおけるポイントやメリット、注意点などを解説します。美容室のM&Aを成功させるために参考にしてください。
美容業界の近年の動向と課題
美容室のM&Aを実行するためには、まず美容業界について知る必要があります。以下では、美容業界の近年の動向を解説します。
理美容サロンの市場規模は前年度比101.1%
矢野経済研究所「理美容サロン市場に関する調査」(2024年)によると、2023年度の理美容サロン市場は、前年度比1.0%増の2兆920億円となっています。コロナ禍後は、毎年増加しています。
美容室の増加による競争激化
2024年10月に厚生労働省が発表した「令和5年度衛生行政報告例」によると、美容室(美容所)の数は27万4,070店になり、1年で4,181店も増えています。その結果、業界内での競争が激化しています。1店舗あたりの客数が伸びず、美容師の人材不足にも悩まされるケースが増えているのが現状です。
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サービスの質の低下
美容師の人材確保が難しくなっており、特に若手の減少が目立ちます。2023年度の美容師免許の新規登録数は約1万8000件で、2000年代半ばのピーク時と比べて6割強まで落ち込んでいます。さらに新卒美容師の36.7%が3年以内に離職してしまう状況です。
このような人材不足は、サービスの質にも影響を及ぼしています。厚生労働省の調査によると、美容室の利用をやめる理由として「転居」の次に多いのが「担当者の退職」や「技術・提案力の不足」でした。各店舗では採用が困難になり、新人育成にも十分な時間を割けない状況が続いています。美容サービスは質が重視される業種だけに、深刻な課題となっています。
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美容室のM&A事例も増加傾向にある
美容室の後継者がみつからずに、事業を引き継げないという悩みを持つ事例も増えています。その結果、美容室M&Aの事例も増加傾向にあります。すでに美容業界において、M&Aは珍しくなくなっています。
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従来は美容室を売約する際に、「居抜き」「スケルトン売却」「運営委託」などの手段が取られました。しかし、これらの方法で売約できるのは、建物や内装、設備といった有形の部分のみです。働いていたスタッフや事業のノウハウなどは、引き継ぐことはできませんでした。そこから無形の資産も譲渡できるM&Aに注目が集まり、実施する美容室が増加しています。
今後は美容室の譲渡方法においても、M&Aが定着する可能性があります。
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美容室のM&Aで実施される手法
美容室のM&Aでは、さまざまな手法が採用されます。以下では、美容室のM&Aで行われる手法について解説します。
株式譲渡
株式譲渡とは、譲渡側の株主が保有している株式を、譲受側に譲渡する手法です。株式の過半数を譲渡し、経営権を譲受側が引き継ぎます。譲受側は、株式総会で役員選任や定款変更などが可能になります。株式会社のM&Aにおいて、実践されることが多い手法です。
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事業譲渡
事業譲渡とは、事業の一部もしくは全部を譲渡するM&Aの手法です。一部の設備、不動産、ノウハウ、人材、取引先との関係など、さまざまなものを譲渡できます。美容室のM&Aにおいても、数店舗の小規模M&Aで使用される例が多いです。
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M&Aにおける美容室の譲渡相場
美容室のM&Aを計画する際には、譲渡相場を把握しておく必要もあります。M&Aの契約において美容室がどの程度の相場感なのか、以下で解説します。
相場は数百万〜千万円程度
M&Aにおける美容室の譲渡相場は、1店舗当たり数百万〜数千万円程度が一般的です。美容室の価値はさまざまな要因で変動するため、相場の幅は広くなります。そのため事前に自社の企業価値を正確に把握し、売却金額の目安を立てることがポイントです。複数店舗をまとめて譲渡する際には、億単位のM&Aになるケースもあります。
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美容室M&Aのメリットと注意点
美容室の経営者がM&Aを行うことには、多くのメリットがある一方、注意点もあります。
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メリット
美容室のM&Aにおけるメリットを解説します。
後継者不足の問題解消につながる
M&Aは、後継者不足の問題解消につながるメリットがあります。親族に事業を引き継ぐ人がいない場合、利益が出ている店舗でも廃業する結果になるケースは多くあります。後継者がいないという理由で事業を畳むのであれば、M&Aで外部へ譲渡すれば事業を継続できます。自社が確立したブランドを存続させるために、M&Aを選ぶことも1つの方法と認識されています。
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従業員の雇用を維持できる
M&Aでは、美容室で働いている従業員の雇用を維持できる点もメリットです。美容室が倒産すると、そこで働いていた従業員は再就職に苦労する可能性があります。従業員のことを考えて、事業を辞めるに辞められない経営者も多いです。M&Aで従業員をそのまま使ってもらう契約を結べれば、雇用を継続した状態で事業を譲渡できます。
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M&Aによる利益確保
譲渡による利益確保ができる点も、M&Aのメリットです。美容室の価値が高いほど、高額で譲渡できる可能性があります。譲渡金額は老後の資金にしたり、新しい事業に使ったりといった、さまざまな用途に使えるでしょう。
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注意点
美容室のM&Aを実施する際には、注意すべきポイントがあります。以下では、美容室のM&Aでの注意点を解説します。
経営が傾いてからM&Aを計画しない
経営が傾いてからM&Aを計画しても、理想とする結果を引き出せない可能性が高いです。経営状況が良くない店舗を高額で譲受したいと考える人は少なく、譲渡額が安くなると予想されるからです。M&Aは、ある程度経営が安定していて、将来のビジョン(展望)がみえている時点で計画することが重要です。
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美容室の強みを明確にする
M&Aでは、自身の美容室の強みを明確にした上で行うことがポイントです。他店舗と比較して何が違うのか、どのような点で差別化できるのかを、具体的に譲受側にアピールしましょう。譲受側に価値を見出してもらうだけでなく、譲渡側から積極的に魅力を伝えていく姿勢が重要です。また、収益予測や新規顧客数など、詳細なデータを出すこともM&Aの譲渡時に有効な方法です。
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美容室のM&Aにおける具体例5選
美容室のM&Aが実現した事例は多くあります。以下では、美容室のM&Aの具体例を紹介します。参考にしてください。
L.B.G
2019年10月、L.B.Gはヤマノホールディングスに株式を譲渡する形でM&Aを実施しました。L.B.Gは、20〜30代の女性向けの美容室を展開している企業です。L.B.Gのブランド「La Bonheur」や、Webマーケティング、自社アプリによるトレンドの把握方法などが評価され、ブランドの全国展開を進める結果につながりました。
Aguグループ
株式会社ロイネスとAguグループは、CLSAキャピタルパートナーズの運営ファンド「Sunrise Capital」に株式を譲渡しました。株式の取得額は約100億円といわれ、美容業界における大規模なM&A事例として有名です。Aguグループの店舗開発を進めるために、CLSAキャピタルパートナーズのノウハウや資源の活用が計画されました。
エム・エイチ・グループ
2015年6月、「剣豪1号投資事業有限責任組合」により、「エム・エイチ・グループ」のTOB(株式公開買付)が実施されました。「剣豪1号投資事業有限責任組合」は、「剣豪集団」と「潤首有限公司」が共同出資した組合です。「エム・エイチ・グループ」が運営する「モッズ・ヘア」を、中国の美容サービス産業への参入に活用することをM&Aの目的とし、取得価額が19億程度という、大型のM&A事例となっています。
ダイヤモンドアイズ
2014年12月、「ダイヤモンドアイズ」は「アルテサロンHD」の全株式を取得して子会社化しました。まつ毛エクステなどのアイラッシュ事業の市場規模拡大を見込んで、事業ノウハウを持つ「ダイヤモンドアイズ」の獲得を進めた事例です。譲渡額は1億2,400万円と、美容室のM&Aのなかでも比較的高額なものとなっています。
ヘッドライト
「ヘッドライト」は、美容師や施術者との業務委託契約を行う形で、140店舗以上の美容室とアイラッシュサロンを展開している企業です。日本最大のベンチャーキャピタルである、「ジャフコグループ」と「AZ-Star」は、ヘッドライトが持つ事業体制の有用性と成長率を考慮しM&Aを実施しました。アジアへの新規出店なども目標として、ヘッドライトの企業価値のさらなる向上を支援しています。
美容室M&Aのまとめ
美容室のM&Aは、事業承継の手法として近年注目を集めています。店舗だけでなく、人材やノウハウにも価値がある美容室にとって、M&Aによる譲渡には多くのメリットがあります。美容室の譲渡を計画する際には、M&Aもぜひ検討してみてください。
M&Aを行う際には、「みつきコンサルティング」にご相談ください。税理士・会計士・経営コンサルタントがそれぞれの役割をこなし、M&Aの計画を全面的に支援します。M&Aの成約率は80%以上と高い水準にあるため、ご希望の結果を引き出すサポートが実現可能です。M&Aの不安や悩みの解決のために、ぜひ「みつきコンサルティング」にお問い合わせください。
著者
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宅食事業を共同経営者として立ち上げ、CFOとして従事。みつきコンサルティングでは、会計・法務・労務の知見を活かし、業界を問わず、事業承継型・救済型・カーブアウト・MBO等、様々なニーズに即した多数の支援実績を誇る。
監修:みつき税理士法人
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